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- 「中国アニメ講演旅行で感じたこと」 氷川竜介
■ 風景が喚起するアニメ的な感興
さて、講演中でもっとも会場からのリアクションを感じた図版は、加工前の銀座の風景であった。観衆がそれまでアニメ作品中の未来社会だと思いこん
でいたものが、現実に存在しているものだと示されたときに、やはり驚きの感覚が生じたのであろう。これは狙いどおりであった。「実は実写よりアニメ作品の
方が、作家の目を通した日本の風景を文化として深い観点で伝えられるのではないか」ということが、「背景にまつわる話」を主体にした理由だったからだ。
それをふまえて、「吉浦康裕監督が今回初めて訪れた『中国の風景』に非常に深い関心を示している、そして企画中の次回作のインスピレーションを確実に受けた」という話をすると、非常に大きな反応が感じられた。
特に吉浦監督が不在の広州と香港では、実際に監督の撮影した写真を投影し、「作家の目で見た中国の風景」とはどういうものになるのか、「論より証拠」で
示すようにしてみた。「日本のアニメには、作家の価値観がこのように反映している」ということを、ほぼリアルタイムで実証したわけだ。しかも被写体は聴衆
にとっては見慣れた「中国の風景」なのだから、それを異化して見せることもまた「文化交流」のひとつのかたちであるに違いない。現地で考えついたアイデア
ではあったが、大きな功を奏したと思う。
- 「中国アニメ講演旅行で感じたこと」 氷川竜介