Quantcast
Channel: hikol@Tumblr
Viewing all articles
Browse latest Browse all 16678

"その店は、赤と黒を基調としたシックなイメージカラーで、とても落ち着いた、そしてとてもお洒落な内装をしていた。テーブルに席に着いたぼくは、周りを見回してみたのだけれど、その時は、夜9時を過ぎていたにも関わ..."

$
0
0

その店は、赤と黒を基調としたシックなイメージカラーで、とても落ち着いた、そしてとてもお洒落な内装をしていた。テーブルに席に着いたぼくは、周りを見回してみたのだけれど、その時は、夜9時を過ぎていたにも関わらず、多くの客――特に若者たちで賑わっていた。


やがて、灰皿を取ってきたMが遅れて席に着いた。そしてMは、席に着くなり少し安堵した顔で「ああ、いますね」と言った。「と言うか、だらけですね」

そう言われても、ぼくにはなんのことだかさっぱり分からなかったので、ここのどこがアムウェイの根城なんだよと聞いた。するとMは、こんなふうに答えたのだった。

「ほら、あそこのテーブル見て下さい。ほらあそこ、男3人が、2対1で座ってますよね? あれはアムウェイの勧誘なんです」

ええっ! と驚くぼくに、Mはなおも続けた。

「ようく見て下さい。アムウェイの特徴はすぐに分かるんです。ああやって、3人組で2対1に分かれて話してるんですよ。それで、2人組の方が 熱心に話しかけてるんです。それもにこやかに。独特の雰囲気を醸し出してるからすぐ分かります。特徴としては、2人組の片方が話しかけて、もう片方がウン ウンとうなずく感じですね。あれは、話しかけてる方が偉いんです。うなずいてるのがサポート役ですね」

「ほう」

「それから、聞いているのは勧誘されてる方です。ノートにメモとか取ってたら、もう間違いありません。ほら、あの人も取ってるでしょ?」

そう言われてみると、なるほど確かにその3人組は、Mの説明してくれたままの特徴をしていた。男3人が、テーブルを挟んで2対1で、向かい合 わせに座っている。2人組のうち、やけに自信たっぷりで溌剌とした笑顔を見せてる方が熱心に話しかけ、その横で、もう1人の男がふんふんとうなずいてい る。その向かいには、大人しそうな男性が座っていて、話を聞きながら何やらノートを取っていた。


さらにMは、続けて説明してくれた。

「あのテーブルだけじゃありませんよ。あそこにもあそこにも、あそこもそうだし。あれもそうです。と言うか、ほとんどそうですね。時間帯もそうなのかも知れないけど、やっぱりここはすごいや」

そう言われて周囲を見回してみると、驚いたことに、他の多くのテーブルでもそうした特徴的な3人組が見受けられるのだった。あるいは、3人よ りもっと多い人数でも、それらしいグループというのはいた。そんなふうに見てみると、なんだか周囲の誰もがアムウェイの関係者のように見えてきて、ぼくは 不思議な感覚にとらわれた。


それはまるで、デス・スターに乗り込んだルーク・スカイウォーカーのような気分だった。格好だけはストーム・トルーパーに変装しているけれど、いつばれやしないかドキドキしている感じだった。

それでぼくは、思わずMに聞いてみた。

「おれら、2人連れだからアムウェイじゃないってばれないかな?」

するとMは、笑って言った。

「別にこの店がアムウェイに関係しているわけじゃないですよ。たまたまアムウェイの勧誘に都合が良いからよく使われているだけで、アムウェイじゃない人が入っても文句は言われません」

なんでもその店は、アムウェイの本社社屋と渋谷駅のちょうど中間にあるのだそうである。だから、渋谷からアムウェイに向かう通り道にあり、居心地も良くて長時間話すにはもってこいだだから、よく利用されているのだそうだ。

ぼくは知らなかったのだが、アムウェイのでっかな本社社屋が渋谷のNHKの向かいにあるらしい。



- 渋谷にアムウェイの人たちがよく集まるカフェがある - ハックルベリーに会いに行く

Viewing all articles
Browse latest Browse all 16678

Trending Articles