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"Σの名を冠するソフトウェアやハードウェアが、次々販売され始めた。 そのどれもが、現場の技術者達の不評によって迎えられた。 だが、企業の経営者達は、”Σ”の名を、盲目的に、信じた。 販売が始まった時、それ..."

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Σの名を冠するソフトウェアやハードウェアが、次々販売され始めた。
そのどれもが、現場の技術者達の不評によって迎えられた。
だが、企業の経営者達は、”Σ”の名を、盲目的に、信じた。

販売が始まった時、それは、既に時代遅れだった。
ほどなくして、それは、前時代の遺物となった。

こんなことがあった。
あるソフト会社がΣ関係のソフトウェアの開発を依頼された。
散々苦労した上で出来上がったソフトウェアは、余りに低速だった。
だが発注した企業は、Σの名と、とりあえず動いたことに満足し、高速化を進めるように言ってきた。
ソフト会社はさらに試行錯誤を繰り返し、やがて、こう結論を出した。

「Σを使わず、他の普通のコンピュータを使えば、100倍早くなる。」

Σの名を冠するものと、普通に流通しているコンピュータの格差は、そこまで開いていた。

やがて、Σの名を付けても、商品が売れなくなった。
ある会社の販売部長は部下に檄を飛ばした。

「地方だ。地方なら、Σはまだ売れる。」

また、ある会社の企画担当は言った。

「今なら、競争相手も減った。Σの名で予算を獲得するチャンスだ。」

その最盛期、あらゆるメーカーがΣの名を製品につけたがった。
数年後、あらゆるメーカーが、製品の名からΣの名を、外した。

失敗は、あまりに明らかだった。
だが、通産省と全国のメーカー、技術者を巻き込んだプロジェクトだったから、それを公表することは、危険だった。
Σは、その後長い間人々の禁句となった。

1990年12月21日号の日経コンピュータ誌。
こんな特集が組まれた。

「Σ計画の総決算—250億円と5年をかけた国家プロジェクトの失敗」

1984年に企画され、始まった一大プロジェクトは、こうして失敗した。



- 「Σ(シグマ)計画」プロジェクト×(ペケ)

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