不倫は、本当のことを言えば、業界にあまねく偏在している。誰だって知っている。
根も葉もない流言飛語レベルの噂から、「公然の秘密」として関係者の誰もが知っているガチなネタに至るまで、テレビ局の周辺には、それこそワイドショーが年中無休の24時間営業で制作できるぐらいの材料が転がっている。
ところが、それ等の不適切な情交のうち、放送可能な題材として実際の電波に乗るのは、当事者の事務所がある程度納得済みの事案に限られている。あ るいは、離婚発表を写真集の発売日にシンクロさせてくる元アイドルの告白話や、半期ごとに新しい艶聞を供給することで芸能生命をながらえている「恋多き」 女優の、あっけらかんとした号泣会見みたいなネタだけが、いつもの取材メンバーに向けてプレスリリース付きでセッティングされることになる。
かくして、記者は記事を獲得し、スタジオはVTRの尺を確保する。他方、スタジオのコメンテーターは批判対象を入手し、恋愛体質タレントは出演機会と人格的陰影をゲットし、週刊誌は部数と下請けの就業機会を手の内に入れる。つまり、誰もが「得」をしているわけだ。
別の言い方をするなら、「誰が得をするんですか?」という、司会者の叫びは、誰かが得をするニュースしか報じてこなかった番組の体質(←プロモーション
情報とタイアップ企画と宣伝と利益誘導と便宜供与で出来上がったマスセールス報道体制)を裏書する一種の自白だったということだ。彼等は利益を生まない
ニュースを嫌う。たとえそれが真実であっても。
大桃ツイートは、記事を生産する側の人間にとっては、スクープ落ちだった。彼等は、「抜かれた」わけだ。それもライバル社にではなく、ほかならぬ 取材対象たるタレント本人に。これはキツい。芸能リポーターにとっても、彼女のツイートは面目丸つぶれの事態であり、依って立つ基盤を揺るがす地雷だっ た。というのも、醜聞の当事者が事実をつぶやいたら、リポーターは原理的に不要になるからだ。
”- 彼らがあのツイートに怒った本当の理由:日経ビジネスオンライン