その担当者は、非常に威圧的で、「この面接は私が聞く質問に素直に答えれば良い」と始まりました。彼はまず「中学生に戻ってくれ」と。まったく困惑した私の反応を喜ぶかのように、「中学時代を説明してほしい。何をやっていたのか、何を考えていたのか」と。最初は性格テストの部類か、育った背景などについての興味かと思い、淡々と答えていました。相手の質問の例として「どういう部活をやっていたのか、なんでそれを選んだのか」「一番良かった思い出は何か」「一番つらかった時は何か」などです。
次の質問に移って聞かれたのが「では、高校生の時の事を話して欲しい。」一瞬あっけにられた私から出た言葉は「まさか、これから大学、就職、と現在までの自分の体験を全部語らせる気??」でした。相手は「その通り。」私はその時点から相手が何を探しているのか、質問内容に徹底的に注意を向けるようにしました。質問が大学に入った時、やっと自分の中で何かが見えたような感じがしました。
この会社は、実は私が自分の人生を生きる上で、何に興味があり、どういう判断をして、どうやって自分という人間をつくってきたのかという筋道を見定めようとしていたのです。もっと言うと、育つ過程に置いて、私が自分自身の挫折をどのように乗り越え、成功をどのように活かしてきたのか、調べていたのです。私の選んだ全ての判断が「繋がっている」ことを見極めていたのです。私がこれを指摘すると、相手はやっと固い表情を崩しました。「考えてみろ。この会社が探しているのは、ただ単に技能や職務経験がある人じゃない。実際に問題を解決出来る人間だ、いや、問題を先読み出来る人間だ。そのためには、貴方が本当に思慮深く、自分のために最善の判断を尽くして生きてきた証拠が必要だ。」と。
こんな会話もありました。日本の大学はあまり厳しい場所では無いですが、私は3年になったころから必死に勉強をするようになったことを説明すると、相手は「説明が通ってない」「突然勉強を始めるには理由が必要だ」など、挑戦してきます。私は自分の中で勉強への興味や、実は子供の頃から変らない自分の性格や姿勢について思い出すことになりました。
実務についての質問もありましたが、まるでトンチ教室です。「一週間かかる仕事を1日でやれといわれたらなんというか?」とか「間違いの見つけ方は?」など。この会社は、職歴や学歴でなく、本当に問題に対応出来る頭脳を持つ人間のみを探していたのです。このイノベーションの担当者は、このような人選方法に変えてから、会社を辞める人はゼロになった、と。そして、会社の実績も急上昇していることを再度指摘しました。この会社のビジネスを見せてもらうと「だれもやってなかったこと」をいろいろとやっているのが分かりました。この発想の転換も、この不思議な人選で集まった人達から出てきたアイデアだそうです。
”- アウトライヤーから人を雇う工夫 - 戸谷茂山ブログ (via otsune)