”ジュリアン・アッサンジュ:ときに難しいのは、複雑そう な情報を手にとってもらうことなんです。僕がよく使う例は、2008年9月に米国特殊部隊が発行した不正規戦のマニュアルで、数百頁あります。これは頭脳 集団向けに書かれています。特殊部隊が海外へ行き、その国の政府を転覆させようとしたり、あるいは、民間軍を後ろから操って、内乱を制圧するときのため に。つまり、内乱の起こし方と制圧の仕方のマニュアルです。チョムスキーに-1を掛け合わせたみたいな感じで難解なものです。米国の国力を示す手段の全て が書かれています。経済的、軍事的、情報的、外向的な意味での国力です。それらを如何に総動員して、米国の政策を押しつけるか。IMFは米国の国力を示す 経済兵器であるとも書かれています。そう、経済兵器という用語を使っているんです。またUSAIDも経済兵器です。
でもこの書類は、マスコミにはまったく取り上げられません。この書類には、ジュネーブ条約が禁じている内乱制圧の際の敵軍戦闘服の着用をアメリカの政策は特殊部隊には許可していると書かれています。国際法違反です。
それなのに誰も文句を言わない、なぜでしょう。単純な効率の問題です。200頁を超える書類など誰も読む時間がない。軍事用語を表す頭字語い くつか使われているので、辞書で調べる手間もかかる、内容を理解するための負担が大きすぎるんです。侵略された国の諜報部がこの書類を利用することはあっ ても、一般の政治論には登場しない。
そこで僕たちは考えました。どうしたらジャーナリストにその気になってもらい、読む時間を作ってあげられるのか。
実験したことがあります。チュベス大統領の元スタッフが書いた7千通近くのEメールを入手したときです。膨大な情報量です。大量の情報を公開 すると誰も記事にしないことは前からわかっていました。経験のある記者は読む時間がない。そこで関心の度合いを測るため、独占権をオークションにかけまし た。だけど無理だったんです。手続きが難しすぎて。入札価格を決める前に一部分を見たがる人がいたり、その間他の誰にも見せるなとか難しすぎました。
もっと自然に独占権を決める方法があるように思うんです。つまり、ジャーナリストや報道組織やブロガーが、情報の提供にそもそも関与している 場合は、一定期間その人に独占権を与える、ということです。それが彼らに時間を与えます。情報が公開される以前は、独占状態だからすごく価値があるが、公 開されれば供給は無尽蔵、従って公開された情報の商品価値はゼロになります。誰もがそれを利用できるので、ジャーナリストは儲からない、結果として誰も儲 かりません。奇妙なことですけどね。
そこで僕らが作ろうとしているシステムは、情報提供のシンジケート化です。人権擁護団体のウェブサイトやメディア組織が、ウィキリークスを 使った情報提供を要請する、あとは僕らが、保護管轄権をクリアしたり、メタデータを消去したり、公表に伴う法的リスクをとります。こうすることで提供され る情報は千倍にもなります。同時に二次的報道の質も飛躍的に向上します。公表した情報が政治的な影響を持たないとしたら失敗です。検索エンジンにもいくら かの政治的影響力はあります。僕らのヒットの40%は検索エンジンからのものです。ただそれは一般の政治論に加わらないので、他の人が考えていることにつ いての意見を変えるに至りません。
ダニエル・シュミット:もう少し詳しく言うと、情報提供 者は特定のジャーナリストや新聞に対し、調査のための期間を指定します。指定期間が過ぎればウィキリークスが公表することには変わりがなく、これは重要な ポイントです。全ての情報は省略なしに全て公表されるのです。僕らはただその効果を最大にしようとしているだけです。誰かが情報を手にして実際に記事にし てくれるように。もし指名されたジャーナリストがそれについて書かないとしたら、そのこと自体がニュースでしょう。なぜ書かないのか、ということがね。そ して、彼らがそもそも正確な報道をしているかどうかが疑問になる。将来的にニュースがもっとおもしろくなるメカニズムだと思います。
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