“8:*既刊本の版元への配分
たとえばわたしのデビュー作である『限りなく透明に近いブルー』(76 講談社)という作品の場合、当時は出版契約書が存在していなかったということもあり、版元である講談社の許諾および売り上げ配分なしで、わたし自身が G2010で電子化することが、法的には可能なのだそうです。ただ、講談社に無断で『限りなく透明に近いブルー』を電子化して販売することには抵抗があり ます。
思い返せば、35年前、ちょうど今ごろの季節でした。西武新宿線の田無という街の書店で、わたしは「群像新人賞公募」を知り、それまで書きためていた創 作ノートから、210枚の作品を1週間で書き上げました。「群像」という雑誌、講談社という出版社が、『限りなく透明に近いブルー』という小説が誕生する 契機を与えてくれたことになります。それは、よく言われるような、出版社が新人作家を育てるとか、編集者が執筆に協力するというようなこととは微妙に違い ます。作品が生み出される「契機」「場」を提供してもらったということです。わたしは、これまでのすべての作品を自分で書き上げました。出版社および編集 者は、多くの作品を書くきっかけを提供したということです。ただし、その心情的「恩義」を、そのまま電子化における版元への配分に反映させることは、不可 能です。
そこでわたしは、版元に対して、電子化に際し、さまざまな「共同作業」を提案することにしました。たとえば、原稿データの提供、生原稿の確保とスキャ ン、写真家への連絡と交渉、さらに共著者がいる場合にはその連絡と交渉、そしてリッチ化の1部の作業、およびコストの負担などです。その上で、G2010 が版元への配分率を決め、配分率は個別の作品ごとに設定します。たとえば『あの金で何が買えたか』(99 小学館)や『新13歳のハローワー ク』(2010 幻冬舎)という絵本は、版元との新しい共同作業が発生しますので20から30%という高率の配分を予定しています。ただし、電子化への共同作業が発生しな い場合は、配分がゼロの例もあります。
つまり、面倒ではあるのですが、G2010において既刊本を電子化して販売する場合には、それぞれの作品ごとに、売り上げ配分を決めることにしました。 作品によって要件が異なるので、その作業は必須だと考えています。そういった個別の配分例を透明化・公表し、一定量積み重ねることで、全体としてのモデル となっていくのではないかと思います。”
- G2010設立の理由と経緯
たとえばわたしのデビュー作である『限りなく透明に近いブルー』(76 講談社)という作品の場合、当時は出版契約書が存在していなかったということもあり、版元である講談社の許諾および売り上げ配分なしで、わたし自身が G2010で電子化することが、法的には可能なのだそうです。ただ、講談社に無断で『限りなく透明に近いブルー』を電子化して販売することには抵抗があり ます。
思い返せば、35年前、ちょうど今ごろの季節でした。西武新宿線の田無という街の書店で、わたしは「群像新人賞公募」を知り、それまで書きためていた創 作ノートから、210枚の作品を1週間で書き上げました。「群像」という雑誌、講談社という出版社が、『限りなく透明に近いブルー』という小説が誕生する 契機を与えてくれたことになります。それは、よく言われるような、出版社が新人作家を育てるとか、編集者が執筆に協力するというようなこととは微妙に違い ます。作品が生み出される「契機」「場」を提供してもらったということです。わたしは、これまでのすべての作品を自分で書き上げました。出版社および編集 者は、多くの作品を書くきっかけを提供したということです。ただし、その心情的「恩義」を、そのまま電子化における版元への配分に反映させることは、不可 能です。
そこでわたしは、版元に対して、電子化に際し、さまざまな「共同作業」を提案することにしました。たとえば、原稿データの提供、生原稿の確保とスキャ ン、写真家への連絡と交渉、さらに共著者がいる場合にはその連絡と交渉、そしてリッチ化の1部の作業、およびコストの負担などです。その上で、G2010 が版元への配分率を決め、配分率は個別の作品ごとに設定します。たとえば『あの金で何が買えたか』(99 小学館)や『新13歳のハローワー ク』(2010 幻冬舎)という絵本は、版元との新しい共同作業が発生しますので20から30%という高率の配分を予定しています。ただし、電子化への共同作業が発生しな い場合は、配分がゼロの例もあります。
つまり、面倒ではあるのですが、G2010において既刊本を電子化して販売する場合には、それぞれの作品ごとに、売り上げ配分を決めることにしました。 作品によって要件が異なるので、その作業は必須だと考えています。そういった個別の配分例を透明化・公表し、一定量積み重ねることで、全体としてのモデル となっていくのではないかと思います。”
- G2010設立の理由と経緯