■データセンターは、そもそも冷却する必要があるのか?
――いま、どんな発想を転換した研究に取り組んでいますか。
データセンターは、そもそも冷却する必要があるのか、という点ですね(笑)。これまでにも、データセンターで使用するプロセッサには、低 消費電力のものを採用し、電力効率を上げることで冷却におけるニーズを減らしてきた経緯がある。ただ、それでも冷却するというのは安定稼働をさせるために は必要な条件だった。
ですから、データセンターを構築するためには、電力の確保よりも、冷却するための水の確保の方が優先されている。これによって、データセ ンターの設置場所も限定されてきたわけです。現在のように全世界10億人を対象にしたデータセンターの構築ならばそれでいいが、将来、全世界50億人を対 象に運用しようということになると、設置場所が限定されることは大きなリスクが発生することになる。
水による冷却の必要がなければ、より多くの場所が設置候補となる。ですから、水を使わない、つまり冷却しないデータセンターを実現しなくてはならないのです。
――それはどうやって実現するのですか。
まず大切なのは人々の発想を変えることです。データセンターについて人が信じていたのは、データセンターは寒くなくてはいけない。人間が震えるほどの寒さが必要である。そして、気温が低い方がハードウェアの信頼性が上がるという常識です。
ところが、自ら実験をし、ハードウェアベンダーとも一緒になって研究を行ってきた結果、それは決して真実ではないということがわかった。 高温でもハードを運用することができる。ほとんど冷却をしなくても障害が抑えられる。実は、私のチームのメンバーが、サーバーを何台かテントの中に入れて 稼働させてみた。雨はしのげるが、それ以外の気象状況の影響は受けるという状態です。実験をしたのは、シアトルですから、それほど気温は上がりませんが、 それでもセ氏30度程度で稼働させても問題はないということがわかりました。
こうした経験をもとに、高温になるアフリカのサハラ砂漠でも動かすことができるか、湿度が高いシンガポールでも動かすことができるか、そうしたところに研究テーマを置いています。
”- 「データセンターは寒冷地が適しているという常識を覆す」、Microsoft・リード副社長 - クラウド Watch